Omdiaの集計によると、スマートスピーカーの世界出荷台数は2025年下期に前年同期比4.6%増の2,720万台となりました。伸びに戻ったのは2年ぶりです。
2026年上期はさらに加速し、前年同期比13.4%増の2,750万台。この伸び率は2021年下期以来の高さです。
成熟したと見られていたカテゴリーが、二桁の伸びに戻りました。
単価も同時に上がっている
もう一つの変化は価格です。
平均販売価格は2025年上期の98ドルから、下期には108ドル、2026年上期には119ドルまで上がりました。
台数と単価が同時に上がるのは、家電のカテゴリーではあまり見られません。値下げ競争で数を伸ばすのではなく、より高い製品が選ばれているということになります。
きっかけは音声アシスタントの入れ替え
2025年の秋以降、主要3社が相次いで新しい音声アシスタントを投入しました。
Amazonは大規模言語モデルを組み込んだAlexa+を展開し、Echo Dot Max、Echo Studio、Echo Show 8、Echo Show 11を新しいラインナップとして揃えています。
Googleは、2025年10月にGemini for Homeを発表。対応する新型機のGoogle Home Speakerは2026年6月25日に発売されました。価格は99.99ドルで、同社としては6年ぶりの新しいスマートスピーカーです。
Appleは、Apple Intelligenceに対応したSiriをiPhoneやiPad、Macなどで展開しています。が、現時点でHomePod向けの提供は発表されていません。
| 製品 | 音声アシスタント | 価格(米国) |
|---|---|---|
| Google Home Speaker | Gemini for Home | 99.99ドル |
| Amazon Echo Dot Max | Alexa+ | 99.99ドル |
| Apple HomePod mini | Siri(HomePodでのApple Intelligence対応は未発表) | 99ドル |
買い替えの理由が生まれた
これまでのスマートスピーカーは、決まった言い方をしないと反応しませんでしたが、新しい音声アシスタントでは普段通りの話し方で伝えられ、複数の指示をまとめて出すこともできます。言い直しにも対応します。
この違いは、既存のユーザーにとっては買い替え理由になり得ます。数年前に買った機器を使い続けている人が多いカテゴリーのため、買い替え需要が一度に動けば、出荷台数は短期間で押し上げられます。
単価が上がっているのも、同じ理由で説明できます。新しいアシスタントを動かすには処理能力が必要で、そのぶん製品の中身が変わっています。安い旧型が値引きで売れる市場から、新型が定価で売れる市場に戻ったと考えられます。
月額課金という新しい形
今回の世代交代には、これまでになかった要素があります。有料の購読サービスです。
Google Home Speakerは、本体を買えば音楽再生やタイマー、基本的な家電の操作、Geminiへの質問までは追加費用なしで使えます。ただし、カメラ映像の検索といった高度な機能はGoogle Home Premiumの対象で、月額10ドルの課金が必要です。
AmazonのAlexa+は、プライム会員であれば追加費用なしで利用できます。
メーカー側から見ると、1台99ドルの機器を売って終わりだった商売が、継続課金の入口に変わったことになります。値下げ競争に向かいにくい構造でもあります。
この形が成立している背景には、生成AIの普及によってAIサービスへの価格感度が下がってきたことがあるのではないか、というのが当社の仮説です。月額20ドル前後のAIサービスに課金する習慣が広がったことで、月額10ドルという水準が高く感じられなくなっている可能性があります。数年前であれば、家電に月額課金を付けること自体が受け入れられにくかったはずです。
日本への投入も始まっている
日本市場についても動きがあります。
Google Home Speakerは、発表時点で日本を含む19の国と地域での展開が予定されていました。米国やカナダ、欧州各国と並んで、日本も投入対象に入っています。
ただし、音声アシスタントの機能がどこまで日本語に対応するか、対応の時期がいつになるかは、製品によって差が出ます。この点は、前回のスマートグラスの回で触れた状況と同じです。
日本での普及率は、もともと米国より低い水準にあります。今回の世代交代が日本でも買い替えにつながるかどうかは、実際の販売データが出るのを待つ必要があります。
今後の見通し
ここまでの数字から、いくつかの見立てが立ちます。
ひとつは、この伸びが買い替えによるもので、長くは続かないという見方です。数年分の買い替えが一度に起きているとすれば、2027年以降はその揺り戻しが出ます。新規に買う人がどれだけ増えているかが、次に着目するべき数字になります。
もうひとつは、競争の軸が機器から音声アシスタントに移るという見方です。価格が3社とも99ドル前後にそろっている以上、選ばれる理由はハードウェアの性能ではなくなります。どの会社のAIを家に置くか、という選択になります。
そして、スピーカーという形が残るかどうかも論点です。同じ音声アシスタントは、スマートフォンにも、テレビにも、眼鏡やイヤホンにも搭載されます。家の中の特定の場所に据え置く機器であるスピーカーという形態が、今後も必要とされ続けるとは限りません。
おわりに
スマートスピーカーは、一度は伸びが止まったカテゴリーです。
それが戻ってきたのは、機器が良くなったからではなく、中で動くAIが入れ替わったからだと考えられます。同じ形の製品でも、中身が変われば買い替えの理由になります。
裏を返せば、次にAIが入れ替わったとき、同じことがもう一度起きる可能性もあります。機器の買い替え周期が、AIの世代交代に引っ張られるようになったのかもしれません。
出典
- Omdia「Smart Speaker Analysis: Market Overview – 2H25」(2026年4月)および「同 – 1H26」(2026年9月)
- Google「Meet the new Google Home Speaker, built for Gemini」(2026年6月17日)
- Google「Gemini for Home」発表(2025年10月1日)
- Amazon Echo Dot Max、Echo Studio、Echo Show 8/11およびAlexa+の各製品情報