IDCによると、2026年第2四半期のXRヘッドセットとスマートグラスの世界出荷台数は、前年同期比35.3%増でした。

伸びてはいますが、前の四半期の130.2%増と比べると、かなり落ち着いた数字です。急拡大の局面は一段落したと見てよさそうです。

注目したいのは、伸び率よりも中身のほうです。

ヘッドセットが減り、眼鏡型が増えた

IDCは、この市場をディスプレイなしのグラス、ディスプレイ付きのグラス、ヘッドセットの3つに分けて集計しています。

2026年第2四半期の構成比は、ディスプレイなしのグラスが70.3%。1年前の61.9%から上がりました。ディスプレイ付きのグラスは11.0%から14.3%へ。

一方、ヘッドセットは27.1%から15.4%まで下がっています。

1年で、出荷の中身が入れ替わった 2026年4〜6月 2025年4〜6月 0 20 40 60 80 61.9% 70.3% ディスプレイなしの グラス 11% 14.3% ディスプレイ付きの グラス 27.1% 15.4% ヘッドセット (%) 出典:IDC(2026年第2四半期の世界出荷台数構成比。XRヘッドセットとグラスの合計を100とする)
図1:出荷構成比の変化(2025年4〜6月と2026年4〜6月)

顔に装着する据え置き型の機器から、普段かけていられる眼鏡型へ。1年で、市場の重心がはっきり移りました。

IDCの集計では、ディスプレイなしのグラスは2026年第1四半期だけで約225万台が出荷されています。これは2024年の年間出荷台数とほぼ同じ規模です。

Metaがシェア7割でほぼ独占

メーカー別に見ると、この市場の集中度はかなり高くなっています。

IDCの2026年第2四半期の集計では、Metaのシェアが68.7%。2位のRayNeoが3.6%、Alibabaが2.6%、Xrealが2.5%、Xiaomiが2.3%と続きます。

メーカー別のシェア(2026年4〜6月) Meta 68.7% RayNeo 3.6% Alibaba 2.6% Xreal 2.5% Xiaomi 2.3% 出典:IDC(2026年第2四半期の世界出荷台数ベースのメーカー別シェア)
図2:メーカー別シェア(2026年4〜6月)

Counterpoint Researchが、ディスプレイなしのグラスに絞って集計した2026年第1四半期のシェアでは、Metaは約84%でした。集計の範囲によって数字は変わりますが、どちらで見てもMetaが突出していることは変わりません。

この強さを支えているのが、世界最大の眼鏡メーカーであるEssilorLuxotticaとの提携です。同社は2025年の通期実績として、Ray-Ban MetaとOakley Metaを合わせて700万本以上を販売したと公表しています。

眼鏡は、量販店やECだけでは売りにくい商品です。試着があり、度付きレンズの調整があり、フィッティングがあります。Metaの優位は技術よりも、眼鏡店という売り場を押さえたことによるものと考えられます。

中国勢は成長鈍化

中国メーカーの動きも、この1年で変わりました。

Xiaomiのシェアは、2026年第1四半期の3.1%から第2四半期には2.3%へ下がっています。中国国内で競合が増え、シェアを分け合う形になっているためです。

中国の商務省の集計でも、勢いの鈍化が見てとれます。スマートグラスの販売は2026年1〜8月で前年比120%増でしたが、1〜5月の時点では280%増でした。

地域構成も、他のガジェットとは違います。Counterpointによると、2025年下期のスマートグラス出荷のうち、北米が37%を占めたのに対して中国は6%でした。

低価格の製品を大量に出す中国メーカーが数を伸ばす、という他のカテゴリーでよく見る構図には、まだなっていません。

イノベーター市場から普及期へ

IDCは、ディスプレイなしスマートグラスの世界出荷台数が、2026年の1,360万台から2030年には2,730万台に増えると予測しています。年平均18.9%の伸びです。

ディスプレイなしスマートグラスの出荷台数見通し 0 10 20 30 13.6 2026年 27.3 2030年(予測) (百万台) 出典:IDC(ディスプレイなしスマートグラスの世界出荷台数の予測)/年平均18.9%の伸び
図3:ディスプレイなしスマートグラスの出荷台数見通し

あわせて、平均販売価格は2026年の376ドルから、2030年には229ドル程度まで下がると見ています。

4万円前後で買える眼鏡型のデバイスが当たり前になれば、購入の理由も変わってきます。新しいもの好きが試す段階から、普通の眼鏡の買い替え時に候補に入る段階へ移っていく可能性があります。

日本でも市場投入が始まったが、期待は未知数

日本市場は、世界より遅れて動き始めました。

Ray-Ban Meta(Gen 2)とOakley Metaが日本で発売されたのは2026年5月21日です。価格は73,700円からで、レイバンとオークリーの直営店や公式オンラインストア、Meta.comなどで販売が始まりました。

6月4日からはソフトバンクが取り扱いを開始しています。国内の通信事業者としては初めての取り扱いで、店頭での初期設定サポートも行うとしています。

ただし、発売時点では他国で使える機能の一部が日本では使えず、順次対応するとされていました。ライブ翻訳の日本語対応も発売後のアップデートで追加されています。

世界では2023年から売られていた製品が、日本では2026年にようやく本格的に買えるようになった形です。日本の市場データが出そろうのは、もう少し先になりそうです。

これから何が起きるか

ここまでの数字から、いくつかの見立てが立ちます。

ひとつは、次の焦点がディスプレイ付きに移るという見方です。構成比は11.0%から14.3%へ上がってきました。IDCは、この領域が2026年の300万台から2030年には1,220万台まで伸びると予測しています。伸び率では、ディスプレイなしを上回ります。

もうひとつは、眼鏡店という売り場が参入の壁になるという見方です。スマートグラスは家電量販店ではなく眼鏡店で売る商品になりつつあり、ここを押さえていないメーカーは同じ土俵に乗れません。Metaが眼鏡最大手と組んだ意味は、今後さらに大きくなる可能性があります。

そして、価格が下がることで買う理由が変わります。現在の製品にできることは、写真や動画の撮影、音楽再生や通話、音声でのAIへの質問が中心です。価格が4万円前後まで下がれば、度付きの普段使いの眼鏡として選ばれる場面が出てきます。そのとき比較の相手は、他のスマートグラスではなく普通の眼鏡になります。

おわりに

スマートグラスは長く、ディスプレイをどう載せるかという競争だと考えられてきました。

いま売れているのは、ディスプレイのない眼鏡です。映像を見せることよりも、一日中かけていられることのほうが優先された結果だと考えられます。

この順番は、耳をふさがないイヤホンが伸びている理由とも重なります。性能よりも、身につけていられるかどうか。ウェアラブル機器では、この条件が先に来るのかもしれません。

出典