かつてAIに対する懸念といえば、「個人情報が漏洩する」「自分の仕事が奪われる」といった直接的・実利的な被害でした。しかし現在、主要ニュースを賑わせているのは「自ら能力を高め続けるAI(超知能)の暴走」「AIが人間の制御を離れる事態」「人類の存続そのものに関わるリスク」といった、SFのような、しかしまぎれもなく現実の科学者が真剣に議論している暗い未来像です。

本コラムでは、米Pew Research Centerの25か国調査(2025年)、メルボルン大学とKPMGによる47か国調査(2025年)、Ipsos「AI Monitor 2026」(32か国)、総務省「令和8年版 情報通信白書」(2026年7月公表)といった、各国比較を公開している調査データを交えながら、この「人類滅亡リスク」報道が生活者・ビジネスマンの深層心理に与えた構造変化を解読します。そして、インサイトリサーチの立場から「企業は過熱するAI時代にどう向き合うべきか」という全く新しいマーケティング視点を提示します。


1. 恐怖の質の変化:「実害」から「意味の消失」へ

まず理解すべきは、生活者がAIに対して抱く恐怖の「質」が根底から変化したという事実です。総務省が2024年度に実施した調査では、AI利用のリスクとして「非常にリスクだと感じる」との回答が多かったのは、悪意のある者による犯罪利用、精巧なフェイクにだまされること、AIの回答が事実でない可能性、の三つでした(令和7年版 情報通信白書)。いずれも、まだ「実害」の範囲にある懸念です。しかしAIリスクの受け止め方は、過去数年で3つの段階を経てはっきりと変わってきています。

【第1段階:権利への脅威】 個人情報漏洩・著作権侵害・無断学習への懸念
【第2段階:経済への脅威】 雇用代替・スキル陳腐化・無能化への不安
【第3段階:存在への脅威】 自律型超知能・人類滅亡・人間の決定権喪失(意味の消失)

第3段階の副作用:先のことを考えなくなる

特に第3段階である「存在への脅威」が日常的に提示されるようになったことで、生活者やビジネスパーソンの深層心理には「先のことを考えなくなる」という副作用が生じています。

「数年後に超知能が誕生して人類の主導権が失われるかもしれない」「AIが自律的に世界を再構成してしまうかもしれない」というニュースに連日晒されることで、人々は長期的な未来(10年後のキャリア、老後の蓄え、持続可能な社会形成)に対するコミットメント意識を無意識に減退させています。

この変化は数字にも表れています。メルボルン大学とKPMGが2022年と2024年に同じ17か国で行った比較では、AIを「心配だ」と感じる人が49%から62%へ増え、AIの出力に「頼ってもよい」と考える人は52%から43%へ減りました。日本はこの下落が17か国で最も大きく、43%から21%へほぼ半減しています。使う機会が増えるほど、頼る気持ちは減っている。技術への接触が、安心ではなく警戒を育てている構図です。

同じ17か国での2年間の変化(メルボルン大学&KPMG) 2024年 2022年 0 20 40 60 80 52 43 AIに頼ってもよい (17か国) 43 21 AIに頼ってもよい (日本) 49 62 AIが心配だ (17か国) (%) 出典:Gillespie et al.(2025)The University of Melbourne and KPMG/2022年・2024年調査の比較(単位:%)
図1:AIに頼る意思は下がり、心配は増えている。日本の下落幅は17か国で最大

その結果、「今、この瞬間にしか得られない圧倒的なリアル体験」や「今確実に信頼できる目の前の人間関係」へと関心が極端にシフトする現象が起き始めています。これは一見すると消費の活性化に見えますが、実態は未来に対する「静かな諦め」に裏打ちされた現実逃避的消費に他なりません。

2. オープンデータで読む国際比較:「怒る欧米」と「諦める日本」の構造的断絶

「AI人類滅亡リスク」や「自律AIの暴走」という強烈なニュースに対する反応は、国や文化圏によって大きく異なります。

以下は、公開されている三つの国際調査から日本・米国・英国・ドイツを抜き出し、生活者意識の構造的な違いを比較したものです。三つの調査は実施主体も聞き方も違いますが、同じ設問を同じ時期に各国で聞いているという点は共通しており、国の順位をそのまま比べることができます。

【表1】AIへの不安・理解・企業への信頼(Ipsos・32か国調査)

調査項目(同意した割合) 日本 米国 英国 ドイツ 32か国平均 読み取り
AIを使った製品・サービスに「不安を感じる」 31%64%62%41%50% 英語圏では6割超が不安を表明。日本は32か国中で下から2番目。不安が「表明されない」国。
「AIとは何かをよく理解している」 48%69%67%61%72% 日本は32か国中の最下位。次に低いイタリアでも54%。
AIを使った製品・サービスは「AI利用を開示すべきだ」 68%82%85%75%80% これも日本が最下位。欧米では8割超が開示を求めるが、日本では「知らせてほしい」という声すら弱い。
AIを使う企業は「自分の個人データを守ってくれる」と信頼 30%34%37%42%47% 日本は下から3番目。技術への関心の薄さと、企業への不信が同居している。
今後5年でAIが「自分の仕事を置き換える」と思う 36%25%22%16%35% 不安は表明しないのに、置き換えの見込みは欧米より高い。抵抗ではなく諦めに近い。

出典:Ipsos「AI Monitor 2026」(32か国・23,532人、2026年3月20日〜4月3日実施、オンライン調査)。32か国平均は各国の単純平均。

【表2】AIへの認知・懸念・自国の規制能力への信頼(Pew Research Center・25か国調査)

調査項目 日本 米国 英国 ドイツ 25か国中央値 読み取り
AIについて「多く聞いたり読んだりしている」 53%47%41%51%34% 日本は25か国で最も高い。情報には触れているが、理解には結びついていない(表1)。
AIの利用拡大に「期待より不安のほうが大きい」 28%50%39%29%34% 米国は「不安が勝る」が半数。日本は「期待と不安が同じくらい」が55%と最多で、態度を決めていない。
「自国はAIの利用を適切に規制できる」と信頼 41%44%57%70%55% 日本は中央値を14ポイント下回る。「大いに信頼」はわずか7%、「わからない」が21%。

出典:Pew Research Center「How People Around the World View AI」(2025年10月公表。米国以外は2025年1〜4月に28,333人を対象に実施。日本は電話調査)。

【表3】AIへの信頼・規制・職場での利用(メルボルン大学&KPMG・47か国調査)

調査項目 日本 47か国全体 先進国平均 読み取り
AIを「信頼してもよい」と考える 28%46%39% 47か国で最低水準(フィンランドと並ぶ)。「心配だ」は70%、「期待している」は37%。
現在の法規制・安全策は「十分だ」 23%43%37% 規制は「必要」が68%ある一方、自国のAI規制を「知っている」は11%。
AIを日常的・準日常的に使っている 50%66%58% 米国53%、ドイツ51%、英国52%と大差はない。
職場でAIを意図的に定期利用している(従業員) 31%58%49% 使う人は少ないが、使う人の56%は「出力を確かめずに頼っている」(世界は約3分の2)。
AI関連の研修・教育を受けたことがある 22%39%32% 報告書は研修と知識が特に低い国としてドイツ、チェコ、日本を挙げている。

出典:Gillespie, N. et al.(2025)「Trust, attitudes and use of artificial intelligence: A global study 2025」The University of Melbourne and KPMG(47か国・48,340人、2024年11月〜2025年1月実施、オンライン調査)および同「Japan insights」。

日本と世界の差(メルボルン大学&KPMG・47か国調査) 先進国平均 47か国全体 日本 0 20 40 60 80 100 28 46 39 AIを信頼 してもよい 70 61 64 AIが心配だ 37 60 51 AIに期待 している 23 43 37 現在の規制・ 安全策は十分 31 58 49 職場でAIを 定期利用 22 39 32 AI関連の 研修経験 (%) 出典:Gillespie et al.(2025)The University of Melbourne and KPMG、同「Japan insights」(単位:%)
図2:日本は信頼・期待・研修が世界を下回り、心配だけが上回る

国際データ分析から浮かび上がる3つのインサイト

① 欧米の「アクティブな拒絶」 vs 日本の「不信を伴う受動的依存」

米国や英国では、AIへの不安が6割を超えて表明され、開示義務を求める声が8割を超えています。Pew Research Centerの調査でも、米国では半数が「期待より不安が大きい」と答えました。過激なAIリスクに対する反応が、能動的な要求・拒絶反応として現れる社会です。

日本はこれと形が違います。「AIは私を不安にさせる」に同意するのは31%、「期待より不安が大きい」も28%で、いずれも各国の中で低い。ところが「心配か」と聞かれると70%が心配だと答え、AIを「信頼してもよい」と考える人は28%で47か国の最低水準、AIを使う企業が個人データを守ると信頼する人も30%しかいません。つまり日本の生活者は、不安だとは言わないが、信じてもいない。抗議はしないが、警戒はしている。そして自分の仕事がAIに置き換わると考える人は36%と、米国や英国より多い。同じIpsosの調査で、32か国平均の63%が「AIツールを信用しきれていないが、それでも使っている」と答えていますが、日本の場合はこれに「関心の薄さ」が重なり、便利さゆえにインフラとして使わざるを得ないという「信じていないのに使い続ける」状態が生じています。

AIに対する日本の立ち位置(32か国調査) 米国 32か国平均 日本 0 20 40 60 80 100 48 72 69 AIとは何かを 理解している 31 50 64 AIに不安を 感じる 47 51 33 AIに期待を 感じる 68 80 82 AI利用は 開示すべきだ (%) 出典:Ipsos「AI Monitor 2026」(32か国・23,532人、2026年3月20日〜4月3日調査)を基に作成(単位:%)
図3:理解・不安・開示要求のいずれも低く、期待だけは米国を上回る

② 「本物かどうか分からない」が日常になった日本

メルボルン大学とKPMGの調査では、日本の回答者の80%が「ネット上の内容はAIで作られたものかもしれず、信用できるか分からない」と答え、82%がAIによる偽情報に対する法規制と対策を求めています(47か国全体では87%)。総務省『令和8年版 情報通信白書』でも、日本の生活者がインターネット利用で最も強く不安を感じているのは「個人情報や利用履歴が外部に漏れていないか」で90.3%にのぼる一方、サービスを使うにあたって自分のデータを提供していることを「認識している」人は44.7%にとどまります(米国は76.4%)。何を渡しているか分からないまま漏れることを恐れ、何が本物か分からないまま情報を受け取っている。日本の不安は「AIの暴走」よりも手前の、「分からない」という不透明さに向いています。

③ 企業も政府も、まだ信頼されていないという前提

AIを使う企業が個人データを守ってくれると信頼する日本の生活者は30%(Ipsos、32か国中下から3番目)。自国がAIを適切に規制できると信頼する人はPew Research Centerの調査で41%にとどまり、「大いに信頼している」は7%しかいません。メルボルン大学とKPMGの調査では、現在の法規制や安全策で十分だと考える人は23%で、そもそも自国のAI規制を知っている人が11%です。企業も信じられておらず、政府に止められるとも思われておらず、何が決まっているかも知られていない。この状況下で、企業が「AI人類滅亡リスク」のニュースを無視し、「最新AIを導入して効率化しました」と無邪気にアピールすることは、火に油を注ぐ行為となりかねません。開示を求める声が弱いことは、開示しなくてよいという意味ではなく、企業側から示さなければ何も伝わらないという意味です。

3. 生活者・ビジネスパーソンの深層で起きている3つの変化

ここからは、従来のマーケティングや意識調査では見落とされがちだった、生活者とビジネスパーソンの深層で起きている「新しい行動原理」を3つの概念で紐解きます。

インサイト①:「技術のアピール」が「冷たさ」に見えてしまう逆転

従来のテクノロジー・マーケティングでは、「処理速度100倍」「完全自動化」「人間不要」といった言葉は、純粋な「先進性」や「顧客価値」として機能していました。

しかし、「AI人類滅亡リスク」や「開発減速論」が社会的な常識となった現在、この構造は完全に反転しています。

【従来の認知方程式】
「圧倒的機能・完全自動化」 = 先進的・スマート・顧客思い

【現在の認知方程式】
「圧倒的機能・完全自動化」 = 暴走リスクを無視し、人間を排除する、配慮のない冷たい企業

生活者は、過度な自動化アピールに対して「この企業は、万が一AIが誤った判断をしたときに責任を取るつもりがないのではないか」「人間の労働者や顧客の感情を切り捨てる冷酷な組織なのではないか」という疑念を抱きます。

「技術的スペックの誇示」が、ブランドの「倫理的欠陥」として知覚されるという時代的ギャップが生まれているのです。

インサイト②:ビジネスパーソンの「静かな降伏」と労働の空洞化

職場におけるビジネスパーソンの心理変化も深刻です。

自律型エージェントや高度な推論モデルが業務に組み込まれ、さらに連日のように「人類滅亡」や「超知能誕生」の話題に触れることで、ビジネスパーソンの間には、私たちが「静かな降伏」と呼んでいる心理状態が広がっています。

「静かな降伏」とは
「どうせ近い将来、AIが自分より優れて正確な答えを出す」「数年後にAIが人間を超越するなら、自分が苦労して思考・意思決定・スキル習得をする意味はあるのか」と諦め、思考の主導権を全面的かつ無意識にAIに引き渡してしまう状態。

数字で見ておきます。メルボルン大学とKPMGの調査によれば、日本で職場でAIを意図的に定期利用している従業員は31%と、47か国全体の58%を大きく下回ります。ところが使っている人の中身を見ると、56%が「AIの出力を確かめずに頼った」、40%が「AIのせいで仕事でミスをした」、42%が「AIが作った内容を自分の成果として提示した」、37%が「社内の方針や指針に反する形でAIを使った」と答えています。世界全体でも、出力を確かめずに頼る人は約3分の2、AIが原因のミスは半数超、自分の成果として提示した人も半数超です。日本は「使う人が少ないのに、使っている人は無検証で使っている」という、放置すると危ない形をしています。

組織の側は追いついていません。国内では、生成AIを何らかの業務で使っている企業が86.4%に達した一方、生成AIによる業務変革について「組織的な取組はない」と答えた企業が27.0%(米国1.4%)、環境整備を「特に実施していない・把握していない」企業が19.9%(米国0.7%)ありました(令和8年版 情報通信白書)。AI関連の研修を受けた日本の回答者は22%で、47か国全体の39%を下回ります。個人が使い、組織が把握せず、教えてもいない。降伏が静かに進む条件はそろっています。

この現象は、表面的には「AIツールを使いこなして業務スピードが上がっている」ように見えます。しかし内情は、人間の批判的思考(クリティカル・シンキング)や熱意が完全にストップしており、システムが吐き出したアウトプットを無検証でスルーさせる「責任の不透明化」を引き起こしています。企業にとっては、組織の知的耐久性が根底から崩壊する潜在的リスクとなっています。

インサイト③:「人間の介入」は機能ではなく「安心の確認」である

AIの暴走を防ぐための「人間による停止権限」や、人間が判断に関わり続ける仕組み(Human-in-the-Loop)は、これまではエンジニアリングにおける安全機能の一つとして議論されてきました。

しかし、生活者の心理的インサイトから見れば、これは単なるシステム仕様ではありません。「人間が最後の責任を負っていることを確かめるための、安心の手続き」へと役割が変わっています。

この見立てを支える数字があります。メルボルン大学とKPMGの47か国調査では、5人に4人が「人による監督と説明責任、システムの信頼性の監視、責任あるAIの方針と研修、国際基準への準拠、第三者による保証といった仕組みがあれば、AIをより信頼できる」と答えました。同じ調査は、信頼を最も強く左右するのは技術の性能ではなく、制度と組織のガバナンスだと結論づけています。

Ipsosの調査で、症状から病気を診断する仕事を「主にAIが行うこと」に抵抗がないと答えたのは、32か国平均で48%。個人の資産管理の助言では53%、採用選考では47%でした。裏返せば、いずれも半数前後の人が抵抗を感じています。ドイツでは診断33%、採用24%、フランスの採用は18%と、欧州ではさらに低くなります。人の判断に近い領域ほど、「AIだけで完結すること」への抵抗が残ります。

この仕事をAIが主に行うことに「抵抗がない」と答えた割合 中国 ドイツ 米国 日本 0 20 40 60 80 100 46 38 24 76 採用選考 53 40 36 77 映画・ドラマの 脚本執筆 48 39 33 80 症状からの 病気の診断 49 49 42 86 ブランド広告の 制作 (%) 出典:Ipsos「AI Monitor 2026」(32か国・23,532人、2026年3月20日〜4月3日調査)を基に作成(単位:%)
図4:人の判断をAIに渡すことへの抵抗は、欧州で特に強い

購買・サービス選択における「あえて不便を残す」逆説的価値

つまり、効率化の極致にある現代において、「あえて人間を介在させること」「非効率な手触りを遺すこと」自体が、最も利益率の高いプレミアム価値になりつつあるのです。

4. 企業が犯しがちな「テクノロジー・コミュニケーションの3大過ち」

消費者の心理が「技術への礼賛」から「制御への懸念」へとシフトしているにもかかわらず、多くの企業は過去の成功体験に縛られたマーケティングコミュニケーションを続けています。32か国平均で80%がAI利用の開示を求め、46%が「生成AIの回答が広告主の影響を受けていると分かれば信頼が下がる」と答えている(Ipsos)状況で、技術の高さだけを語る発信は、届かないどころか不信の材料になります。

失敗例1:「全自動・放置OK」の無責任な強調

  • NGな訴求:「AIがすべての意思決定を代行!あなたは何も考える必要がありません」
  • 生活者の本音:「システム事故や誤診、データの歪みがあったとき、誰も責任を取らないつもりだな」
  • 修正策:「AIの高度な分析力と、経験豊富な専門家による厳重なチェックの二重体制」を前面に出す。

失敗例2:「人間の代替」を誇る社外PR

  • NGな訴求:「カスタマーサポートを100% AI化し、人件費を90%カットしました」
  • 生活者の本音:「顧客の手間やストレスを無視して、自社の利益しか考えていない冷酷な企業だ」
  • 修正策:「AI導入により創出された時間で、より手厚い個別サポートを実現」という人間中心の物語に再構築する。

失敗例3:安全への取り組みを「コスト」として隠蔽する

  • NGな訴求:AIの安全性や倫理チェック、データ監査について外部に一切公表しない。
  • 生活者の本音:「人類滅亡リスクや著作権問題が話題になる中、この会社は安全対策を怠っているのではないか」
  • 修正策:C2PA規格の採用、AIガバナンス委員会の設置、安全評価プログラムの実施など「安全への投資」を透明に開示する。

5. インサイトリサーチが拓く「受容性の限界線」の特定

企業が「AI人類滅亡リスク」という未曾有のニュース環境の中で、顧客の信頼を損なわずに先端技術をビジネスに実装するには、従来の「満足度調査」や「購買意向度テスト」では太刀打ちできません。

生活者の潜在意識に潜む「不気味さ」「恐怖感」「倫理的引っかかり」を定量的・定性的に科学する「受容性の限界線リサーチ」が必要です。

当社のインサイトリサーチサービスでは、独自開発した3つのリサーチフレームワークを用いて、企業が攻めと守りのコミュニケーションを最適化する支援を行っています。

【表4】生活者インサイト調査の独自フレームワークと企業の活用成果

分析フレームワーク 測定する受容度・深層心理 企業が得られる具体的マーケティング成果
① 受容境界線マトリクス 「どこまでの自動化なら『便利』と感じ、どの境界を超えると『不気味・恐怖』と感じるか」の臨界点を特定。 顧客離脱を起こさないサービスUI/UX設計および、機能開示のステップ設計。
② 倫理・安全メッセージ効力検証 「人間が止められる」ことの明記やC2PA(生成証明)などの安全表記が、ブランド信頼・購買意向に与える数値を測定。 炎上リスクを最小限に抑えつつ、安心感を購買決定打に変えるPR・広告文脈の策定。
③ リアル・ヒューマンバリュー計測 サービスプロセス内で「あえて人間が対応すべきポイント」と、顧客がそこに支払ってもよい「プレミアム対価」を算出。 AI化によるコスト削減と、人間対応による高価格帯(プレミアム)ブランディングの両立。

6. 不安の時代におけるブランドの「解」:「制御する覚悟」を示す

「AI人類滅亡リスク」をはじめとする先端技術の暴走議論は、一過性のブームでもなければ、一部のSFファンだけの話題でもありません。それは、急速すぎる技術進化に対して、人間の本能と倫理観が発している「生存のための防衛本能」です。

これからの時代、市場で圧倒的な勝利を収めるブランドは、単に「最先端のAI技術を持った企業」ではありません。

「圧倒的なAI技術を持ちながらも、それを人間と社会のために厳格に制御し、人間の尊厳と安全を第一に守る覚悟を示せる企業」です。

生活者が胸の奥底に秘めている「静かな恐怖」と「リアルへの渇望」を正確に読み解くこと。そして、効率化の競争から一歩抜け出し、「人間中心の安心設計」を顧客と共に創り出すこと——それこそが、情報が交錯するAI時代において、揺るぎないブランドロイヤリティを構築するための唯一の道なのです。

参考資料